恋がしたい。ただ恋がしたい。
間近で私を見つめる視線は、さっきまでの見守るような優しいものではなく、微かに熱を帯びていた。
「…ゆ、うすけく、ん…。」
僅かに触れあった後、紙切れ一枚程の隙間しか離れていない唇から彼の名前を呼ぶ。
自分の声とは思えない掠れた声に、ゾクリと背筋から這い上がるような震えを感じた。
反射的に身体を離そうとすると、頭の後ろに手が回る。
そのままグッと引き寄せられると、今度はしっかりと唇が重なった。
「んっ…、んんっ。」
角度を変えながらゆっくりと、だけど確実に深くなっていくキスに息が上がり、手足の力が抜けていく。
堪えきれずに玄関の壁に寄りかかると、手から鞄が滑り落ちた。
後ろについた手に、壁にかけてある姿見のひんやりとした感触が伝わり、自分の身体が興奮して熱くなっていることを嫌でも自覚させられる。
裕介くんの舌が私の舌へと熱を移す。
その疼くような熱が全身へと広がる頃には私も鏡から手を離し、裕介くんの腕にしがみついて夢中でキスを返していた。
「…おいでよ。」
唇が離れ、熱にうかされたまま荒い息を吐く私の耳元に裕介くんは吐息混じりに囁くと、そっと私の手を引いた。決して強引ではなく優しい仕草だった。
だけど指先はしっかりと絡め取られていた。
しなやかだけど、大きくて節々のしっかりとした男らしい指先が私の指に絡まっている。それがさっきまでの舌を絡めたキスを連想させて、熱くなっているはずの身体がまたゾクリ、と震え出す。
逃げ出したいような、でも従わなくてはいけないような、そんな気持ちにさせられる。
操られるままパンプスを脱ぎ捨てて、彼の後に付いていく。そのまま裕介くんは、自分の寝室へと続くドアを開けた。