恋がしたい。ただ恋がしたい。

冷たい泡が喉を滑り落ちていく。さっきまで愛されていたと勘違いして熱くなっていた身体まで、一気に冷たくなっていくように思えた。


いつの間にか洗濯機は止まっていた。


時間が経って少しだけ絡まったシーツを伸ばして、今度は乾燥機にかけた。


愛された余韻が消えていくシーツを眺めながら、服を脱いでいく。


こんな風に、心も何も無かったように全部洗い流せたらいいのに…そう思いながら、熱いシャワーを浴びた。


無理矢理にでも、身体からも余韻を消さないと、おかしくなってしまいそうな気がした。



***


暫くして、乾燥が終わったシーツを取り出して、再び裕介くんの寝室に戻る。


ギュッと痛みだす胸には気がつかないふりをして、シーツを敷いた。


わざわざ私が敷かなくてもいいんだけど、几帳面な性格がそれを許さない。


だから、部屋に入ったらまたどん底まで落ち込むって分かってるくせに、こうしてまた入ってしまった。


この部屋に彼女は入ったことはあるのかな…。


『誰も連れて来る事は無いから安心してよ。』


同居する前に裕介くんは私にそう言ってくれた。今だけは、その言葉を信じていたい。


…ほんの、ちょっとだけ。


枕にペタン、と頭を付けて真っさらなシーツに横になった。


シーツからはふわりと、爽やかな柔軟剤の香りがした。


あの女(ひと)の香りじゃない、私が覚えている裕介くんの香り。


…少しだけ。もう少しだけここにいたい。



そう思っているうちに、いつの間にか深い眠りに落ちてしまっていた。
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