恋がしたい。ただ恋がしたい。
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パタパタ…パタパタ…
軽いまどろみの中で、雨が窓に叩きつけられる音を聞いた。
あぁ…今日は雨か…日曜日なのにもったいないな…。
このまま部屋(ここ)で、もう少しだけうとうとしようかな…。
そう思って寝返りをうった所で、いつもとは違った枕の感触と香りを感じて、一気に脳が覚醒した。
「まずっ…っ、あっ、痛っ…。」
カバッと勢い良く身体を起こそうとした途端、頭がズキリと痛み、思わず顔をしかめた。
あのまま寝ちゃったんだ…
早く戻らないと…
心では早くしなきゃと思っているのに、身体が付いていかない。
ガチャン、バタン。パタパタ…
焦ってもがく私の耳に、リビングの扉が開く音が聞こえてきた。
どうしよう。間に合わなかった。
パタパタ…足音が近づいてくる。
ドアが開く瞬間、枕に頭を戻して咄嗟に寝ているふりをしてしまった。
「えっ…。」
驚いたような裕介くんの声が聞こえた。まさかここに私がいるなんて思ってなかったのだろう。
「…香織ちゃーん。…寝てるの?」
問いかけているのに、起こさないくらいの押さえた声量で話しかけてくる。
目を開けなくちゃ。
そう思うのに、気まずくて、何て言ったらいいのかも分からなくて、目を開けられない。