恋がしたい。ただ恋がしたい。
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「ーおり、かおりー、寝てるの?」
誰かが私を呼ぶ声が聞こえる。
寝てるに決まってるじゃない。こんなに目の前が真っ暗なんだもの。
ゆさゆさと身体を揺すぶられる感触がしても、されるがまま目を開けず、指一本動かさずに黙っていた。
「香織…………死んでないよね?」
突然耳元でそんな声がして、思わず噴き出してしまった。
「ふっ。」
「あー!やっぱり起きてた!コラ!タヌキ寝入り!!」
ゆっくりと目を開けて、目の前で頬をふくらましている親友に謝る。
「ごめんごめん。…生きてるけど、起きたのは今だよ?紫。」
そう言いながら身体を起こす。目眩も頭痛もすっかり消えていた。
それどころか夢も見ずに眠ったせいか、頭も冴えて、気分は妙にすっきりとしていた。
「ああ良かった。だいぶ回復したみたいね。顔色も問題無いし。青いの通り越して紙みたいな顔色だったって聞いたから焦ったわ。」
紫は安堵したように、はぁーと息を吐いた。
「何か食べた?水分は?」
清涼飲料水のペットボトルの蓋を開け、手渡してくれたのをありがとうと言って受け取ってから、はたと気がついた。
「あれ?紫、どうして此処にいるの?」