恋がしたい。ただ恋がしたい。

あの時は、私が裕介くんと二人で暮らすって聞いたばっかりでちょっと混乱してたから、気にもしなかったけど…


確かに、今まで奈緒子ちゃんや純くんも来てるのかな…なんて考えてしまって、遊びに来るのに抵抗を感じた事もあった。


あったけど、二人がここに越して来た当時は私もまだ亨と付き合って無かったから、毎週のように…誘われるままに遊びに来ていたような気がする。


そんな事を繰り返してるうちに、抵抗とか気まずい気持ちなんてすっかり忘れてしまっていた。



「まぁ、このマンション借りる事情は前にも話してたから、香織も知ってるでしょ?それでさ、部屋も決まっていざ引っ越すって時になってね、裕介が急に『香織ちゃん以外の友達をここには呼ばないで。もちろん、彼氏もダメだからね。約束だよ。』なんて言い出したんだよね。」


紫の言葉に、さらに目を丸くする。


「…どうして?ねぇ、何で?…亘さんも来た事無いの?ほんとに?」


「ははは。香織、驚きすぎ。」


笑いながらも否定しないって事は、ほんとに亘さんも来た事が無いんだ…。


でもどうして?


「『どうして?』ってのは、言った本人に聞いてみるのが一番じゃないかなー。…そろそろ帰るってさっきLINE来てたしね。」



私の疑問に答えるように紫が言った瞬間、インターホンの『ピンポーン』という音がリビングに鳴り響いた。



「ほら来た!はいは~い。」



紫は予想していたように、軽やかな足取りで玄関へと向かって行く。


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