恋がしたい。ただ恋がしたい。
ーバタンー
玄関の扉が閉まって紫の姿が消えると、リビングはシーンと静まり返った。
看病しに来てくれたのはありがたかったけど…私にも裕介くんにも言いたい放題言って、満足したようにさっさと帰ってしまった。
まるで…
「…台風みたい。」
「…台風みたい。」
ぴったりと二人の言葉が重なった。
それを聞いて私は思わずクスッと笑ってしまったけど、裕介くんはふっと視線を逸らして俯いてしまった。
…やっぱり。
不安な気持ちで胸がギュッと軋む。
『香織が具合が悪くなったのって、アンタが原因だからね。』って紫が言った時、裕介くんは『何で?』とか『どうして?』っていう驚き方はしていなかった。
『やっぱりそうか』って…原因に心当たりがある表情に見えた。
紫が言ってた『中途半端』な事って、彼女がいるのに私と寝た事なのかな…。
なら、紫は詳しくは話さなかったけど『約束』していた事だって何となく予想はつく。
裕介くんは、私と寝た事を…ううん、私と一緒に暮らした事も後悔しているのかも…。
…って、ダメダメ。また弱気になる所だった。
ちゃんと裕介くんに向き合って気持ちを伝えて、彼女の事も含めて、聞きたい事も全部聞くって決めたんだから。