恋がしたい。ただ恋がしたい。

ただ、志田ちゃんは一人で行くつもりは無かったらしい。

「ねっ、崎ちゃんセンセ。」


志田ちゃんが、私の方を見てニッコリと笑う。


その顔は、私も一緒に行くと信じて疑っていなかった。


「……っ、あー……。」


「崎ちゃんセンセ、いつも土曜日は学校に来てますよね?ちょこっとだけ時間作れませんか?それとも、何か急ぎの校務ありましたっけ?何なら手伝いますよー。」


確かに、志田ちゃんと一緒に職場のお祝いとは別に出産祝いのプレゼントを渡したし、誘われたら普通は一緒に行くのが自然だよね。


同僚だし。それに、私は純くんとは同級生だし。


……ただ、その自然が、私にとっては不自然な行動になってしまうってだけで。


昔の恋のライバルに会いに……行く?しかも惨敗した上に、軽く修羅場になったその人の……出産を……祝いに?


……いやいやいや!無理無理無理無理無理!!


固まりながらも、そろそろと純くんに視線を移すと、すーっと目を逸らされてしまった。


……ずっ、ずるい。ちょっと!こっち見なさいよ!!


「奈……嫁に聞いてみる。」


純くんのその場しのぎの言葉を聞きながら、何とか私が行かないで済む方法がないかと、今日まで考えていたのだけど。


むしろ『初めての育児で余裕が無いから』的な感じで純くんがうまく断ってくれないかなー、なんて少しだけ期待していたんだけど……
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