恋がしたい。ただ恋がしたい。


「ほんと、純くんは優しいよね。ねぇ香織ちゃん。」


『ちょっと嫌な事があった』私に捕まってしまった裕介くんに、純くんとのやり取りを洗いざらい打ち明けて最後に言われた台詞がコレだ。


…出たよ。純くんバカが。


裕介くんは紫とは年子で、紫と同じく私よりも純くんとの付き合いは長い。


純くんと同じく中学からバスケ部に所属していて、裕介くんにとって純くんは『優しくて』『頼りになる』『憧れの』存在らしい。


そして…


「あーあ。香織ちゃんは、純くんにこんなに心配されてて、いーなー。何だかんだ言ってもさ、紫ちゃんも香織ちゃんの味方だし。ほんと、羨ましいなぁ。」


この人は私が紫を好きなのと同じくらい紫の事が好きで…姉に対する愛情と同じくらいに純くんの事が大好きな人なのだ。



…ちょいちょい言い回しに腑に落ちない部分はあるけど、急な呼び出しにこうして来てくれて、ちゃんと最後まで話を聞いてくれたんだから、お礼は言っておかなくちゃ。



「そうだね…裕介くん、ありがと。話聞いてくれて。」



ありがとう、と頭を下げると、裕介くんは「どういたしまして。」と、形の良い唇の両端を上げてにっこりと微笑んだ。



その色気のある眼差しに心臓がドキリと音を立てる。



…ほんと、姉弟そろって綺麗な顔してるんだから。
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