恋がしたい。ただ恋がしたい。

「あっちの方の引っ越しも、全部済んだんだよね?」


「うん。おかげさまで。…ちょっと恥ずかしかったけど。」


紫がアパートを出た翌週に、私は長年住んでいた部屋を引き払った。


裕介くんのバスケ部の時の後輩で、私も顔を知っていた子が実家で運送屋をしているとかで、びっくりするくらい格安で引っ越しを請け負ってくれた。


ついでに、あーんな事や、こーんな事をしたソファーやベッドも処分してもらって、気分はすっきり爽快だ。


ただ、その子には裕介くんとの仲を散々からかわれて、ずいぶん恥ずかしい思いをした。



裕介くんなんて、否定もせずにただ笑ってるだけだったし!


絶対同棲だって思われてるよ…。


「まぁ、安く済んだなら良かったじゃない。で?あのバカ男との事は片がついた訳?」



「うーん…片を付けたと言うか、何と言うか…。」


アパートに残されていたバカ男…もとい、亨の荷物を段ボールに詰めて送ってやろうかと思ったけど、よく考えたら住所を知らなかったので諦めて処分した。



勤め先なら知っているけど、小学校に送りつけるほど意地悪にもなれなかったし、そこまでの気力もなかった。



正直、今は亨に対して何の感情も湧いてこない。



あ、引き払う時にやっぱり鍵を交換しなきゃいけなかったから、鍵代返せ!って気持ちはあるけどね。
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