恋がしたい。ただ恋がしたい。
「私だけ作ってる訳じゃないよ?もちろん裕介くんも作ってくれるし、私がご飯作る日が続いたら、代わりに掃除とかしてくれるよ?」
「当たり前よ。香織だけにご飯作らせてたら、あたしが黙ってないわよ。」
「へー。崎山って、今、裕介と同棲してんの?」
紫の会話に被さるように後ろから聞こえた声に、全身がビキッと音を立てて硬直した。
「あれー、奏一くん。珍しいね、」
「いらっしゃいませ。フォンダンショコラはどっち?」
「香織ー。」
「はい、どうぞ。」
「…どうも。」
すっ、とバニラアイスの乗ったフォンダンショコラの皿を差し出されて、反射的に受け取った。
だけど、皿を持つその手を見た途端、勝手に心臓がバクバクと音を立てて、ダラダラと冷や汗が流れ始める。
…何で、コイツがここに居るの?
いや…コイツの店だからいてもおかしくない。おかしくはないんだけど……。
でもいつもは可愛い女の子がケーキを運んで来てくれるのに。
…で?
…何で厨房に戻んないで立ってんの?
「久しぶりに会った同級生と会話をするくらいの余裕はあるつもりだけど、どうやらあんまり歓迎されてないみたいだね。」