恋がしたい。ただ恋がしたい。
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ガチャ…バタン。
玄関の開く音が聞こえて、がばっ、と反射的に顔を上げた。
あれ…もう暗い?
うぅっ、身体が痛い…。
どうやら、リビングのローテーブルに突っ伏したまましばらく眠ってしまっていたらしい。
首を動かしたら予想以上に凝り固まっていて、思わず「ううっ…」とうめき声をあげてしまった。
「うわっ!!びっくりしたー。」
私のうめき声が聞こえたのか、裕介くんの驚いた声が暗いリビングに響き渡った。
裕介くんは今日はラストまでだったから、今は確実に23時を過ぎているはずだ。
電気も点いていないリビングに、私がいるとは思ってもみなかったのだろう。
「…香織ちゃん、何やってんの?」
パチン、と音がしてリビングがパッと明るくなる。
眩しさに目をパチパチさせながら、リビングのドアの前に立っている裕介くんをようやく視界に収めた。
「んー…まぶしい…。おかえり。…ねちゃってたみたい。」
「そうみたいだね。いつから寝てたの?7月だからってこんなとこで寝てたら、さすがに風邪引いちゃうよ。」
そう言いながら裕介くんの視線は、私の傍らにスーッと移動していく。そして、呆れ顔で呟いた。
「…また飲んでたんでしょ?」