小さな恋のメロディ

「ただいま」



玄関を開けると、ママが慌てて電話を切る声が聞こえてきた。

ママはきっとパパじゃなくて、この電話の相手が好きなんだろうと私は感じている。



「今日は早かったのね?」


「……。私、彼氏できたよ」


「又?貴女もそろそろ落ち着かないと……」



そういう母親の目を真顔で見て私は言う。



「大丈夫だよ。ママと電話の人みたく、変な付き合いはしてないから」


「……。パパには内緒にするから、ほどほどになさい」



私はそのまま少し笑って言った。



「パパに言ってもいいよ。私はママのこと、パパには言わないから」


「……」



ママは動揺したように私から目を反らし、私は部屋に戻ると里中から電話が鳴った。



「でも嬉しいな。綾香さんと付き合えて」


「……なんで?」


「好きだから」


「ふーん……」


「綾香さんは何処か行きたいところある?」


「……ない」


「なんで?」


「何処行ってもつまんないから」


「そっか……」



そんな話しをして、電話を切った。


私はいつも疑問に思っていることがある。


“好き”


って、どんな気持ちなの?


それは、どんな男と付き合っても分からなかった……。


私はそれが知りたくて、小さな子供が好きなキャラクターの『プレミアムカード』を欲しがるのと同じように、男と付き合う。

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