小さな恋のメロディ
「カラオケに行きません?」

「…カラオケ?」

「余り、人に聞かれたくないから…」


私とマリナは、カラオケ店に入った。
部屋に入り飲み物と軽食を頼むと、マリナが話し始めた。


「まさか、こんな所に綾香さんが居るなんて思わなかった…。綾香さん、私の事分かってないでしょ?」

「……」

「私、中津です。中津万里奈」

「……中津議員の娘さん?」

「はい」

「…何で?」

「親へのささやかな抵抗…かな。家を飛び出して、お店を転々と…。綾香さんは?」


私は今までのいきさつを全部話した。


「そっかぁ。やっぱり皆色々あるんですね…」

「みんな?」

「キャバクラで働いている人たちは、色々抱えている人が結構居るんです。旦那さんが働かないとか、彼氏の借金を返してるとか…。お金が欲しいだけの人もいますけどね」


私は女の子と話す事は無くて、ただ、

”華やかな女の子たち”

そう思っていた。


そんな中にも、それぞれの人生がある…。


「じゃ、帰りましょうか?」

「うん」

「仲良くしてくださいね」


私は笑顔で答え、マリナと携帯番号とメールアドレスを交換した。

同じような境遇の、新しい友達…。

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