小さな恋のメロディ
ー翌朝


トントン…っと心地良い包丁の音で目が覚める。


「…哲平?」


目を開けると、隣で哲平はまだ眠っていて、キッチンには里沙の姿が見えた。

起き上がると部屋は奇麗に片付いていて、きちんと畳まれた洗濯物がある。


「ごめんね、勝手に使って…。もう少し寝てていいよ」


笑顔で里沙が言う。


「…ありがとう。手伝うよ」


私は複雑な気分だった。
料理が出来た頃、哲平が目を覚まして起き上がる。


「…おはよ。いい匂いだな。何か部屋も奇麗になってる?」

「昨日のお礼だよ。食べよっ!」


哲平は一口食べて言う。


「あぁ、上手いなぁ!」

「綾香はどう?」

「うん、美味しい」

「良かったぁ!…これからもちょくちょく遊びに来ていいかな?」

「当たり前だろ}


二人の会話を、ガラス越しに見ている感じだった…。

里沙はご飯を食べると、学校があるからと言って帰って行く。


「アイツ、家事ちゃんと出来るんだな」


何気ない哲平の一言が、私の胸を突き刺す。

でも、それは今まで何もしてこなかった私のせい…。


「俺、今日は仕事行くから、もうひと眠りするわ」


背を向けて眠る哲平が、遠く感じた…。

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