小さな恋のメロディ
沈黙になった二人の間に、テレビの音だけが響いた。


「では、次のニュースです。今日午前2時頃、兵庫県○○市の繁華街のビルの5階から、牧野誠司さん25歳が飛び降り、死亡しました。牧野さんはキャバクラに通い、借金を重ねていて…」



牧野さんが…




死んだ……




「お前がやってた事って、あーいう仕事だよ?」

「…解ってる」

「紺野の事だって」

「解ってるよっ!私はただ、哲平の力になりたかっただけだよ…」


泣き崩れる私を見て、哲平は言った。


「もし綾香が本当に俺の為にやってたなら…。俺はキャバクラで100万稼ぐより、時給900円のバイトで、1万でも2万でも稼いでくれた方が嬉しかったよ…」

「…?」


私には、哲平が言っている言葉の意味が分からなかった。


「…痛っ」

「綾香?!」

「お腹がっ…」


哲平はビックリして、救急車を呼んだ。

きっと、お腹の中に居る、哲平と私の赤ちゃんが…

私をお母さんと認めたくないんだね


生まれたくなくて


消えようとしている……。


運ばれた病院で、私はすぐに処置を受けた。


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