小さな恋のメロディ
目を覚ますと医者が言った。


「かなり危険な状態でしたが、赤ちゃんは大丈夫ですよ。でも一週間、入院して下さいね」



良かった…。

医者が居なくなると、哲平が言った。


「お前、妊娠してたの?」

「なんとなく、そうかなと思っていたけど…」

「そっかぁ」


…哲平?
私達の赤ちゃん、嬉しくないの?

私は怖くて聞けなかった……。


それから一週間、毎日哲平は病院に顔を出し、私も赤ちゃんも順調に回復した。


退院の日、哲平が迎えに来てくれた。


「心配事やストレスはなるべく避けて下さい。赤ちゃんにも伝わって、ストレスにもなっちゃいますからね。後、検診もちゃんと受けて下さいね」

「はい。ありがとうございました」


私達は医者に深々と頭を下げて病院を後にする。


「ごめんな…」

「?」

「俺、全然気付かなくて…」

「ううん!」

「検診もあるし、俺、頑張って働くから」

「…生んでいいの?」

「俺達の楽しい家族を作るんだろ?」


繋いだ手をギュッと強く握った。


哲平と赤ちゃんと私…。
三人で生きて行こうね。

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