小さな恋のメロディ
「…哲平のご両親は?」


パパに融資を止められて、大変な思いをしているんだよね?


「うち?今日病院に行く前に電話したよ。ガキが出来たって言ったら”うちは大丈夫だから、二人でしっかり頑張れ”って…」



それは、哲平が初めて私に見せた涙だった…。


私は哲平を思いきり抱き締める。

哲平は何も言わないで、ただ、泣いていた…。


哲平は、家の事を言わない。


”お前の親のせいだ”


そう責めてくれたら、どんなに楽だろう…。

私は何も言えなくて、抱きしめる事しか出来なかった…。


翌日から、私がキャバクラで働く前の生活に戻った。

一つ違うのは、私のお腹の中にいる小さな命…。


「身体、辛かったら寝てろよ?じゃあ、行って来るからな!」


私にキスして、お腹をソッと撫でると、哲平はいつもより元気に仕事に出掛けた。

掃除をしてると、見覚えのあるピアスが一つ、部屋に落ちていた。


…里沙の?


里沙は何をしているんだろう?

気になって電話したけど、里沙は出なかった……。


電話を切った瞬間、電話が鳴った。


「はい」

「もしもし、アヤさん?!」

「マリナ?」

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