小さな恋のメロディ
あれ以来、不思議と大野哲平を目で追いかけるときが増えた。
大野哲平は、私に絡んでくることもない。
私は里中と別れてから、誰とも付き合わず、ただ毎日を過ごしていた。
そんなある日の学校の帰り道、小さな空地の前を通りかかったとき、猫の鳴き声が聞こえてきた。
空地に入ると、真っ白い小さな子猫が一匹、段ボールの中に入れられて、鳴いていた。
「捨てられたの?うち、ママがアレルギーで、動物飼えないんだ……。明日から食べ物持ってくるから、ごめんね」
そう言って猫の頭を撫でると、家に帰る。
それから毎日、私はお弁当を少し残しては学校帰りに、空地にいる小さな子猫にあげていた。
この時間は学校や家にいるよりずっと心地いい……。
「みぃちゃん、今日はいっぱい持ってきたからね!」
子猫に『みぃちゃん』と名前を付け、頭を撫でていると、後ろに人の気配を感じた。
振り返ると、知らない男が立っていて私に言った。
「……あっ、俺、友達に頼まれて餌あげに来たんだ。君もあげてたんだ?」
「……別に」
「その制服、清林高校だよね?」
私は男を無視して空地から離れる。