小さな恋のメロディ
「こんにちは。体調は良くなった?」


”なるみさん”は毎日お見舞いに来る。


「いつもありがとうね。もうすぐ退院出来そうなの」

「そっかぁ、良かったな」


”なるみさん”は優しい顔をして、微笑んだ。
この病院で目が覚めてから、ずっと疑問だった事を私は聞いた。


「……。”なるみさん”は私とどんな関係だったの?」

「貴女の婚約者なのよ」

「…婚約者?私、結婚するんだね」

「そうよ。本当はこの春にでもって話だったんだけど…」

「じゃあ、早い方がいいのね」

「…そうね」



「本当にそれでいいの?」


”なるみさん”が言った。


「だって、本当だったらもう結婚していたんでしょ?」

「綾香ちゃんは、僕が好きなの?」

「……」

「結婚は…綾香ちゃんが、僕と本当に結婚したいと思ってからでいいよ…。もうあんな思いをするのは、まっぴらだからね…」


そう言って寂しそうに”なるみさん”は笑った。


仕方がないのかもしれない。
なるみさんと婚約してたのに、私は他の人の赤ちゃんを身ごもっていたのだから…。

そう考えると、自分の過去なんてますます知りたくないと思った…。

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