小さな恋のメロディ
「…ジュース買って来る」

「ジュースならママが買って来るから、貴女は寝てなさい」

「…少し歩きたいの」

「じゃあ、僕も一緒に行くよ」

「そうね、二人で行ってらっしゃい」


病室を出て、自動販売機に向かう。


「ゆっくりでいいから」


なるみさんは、優しくエスコートしくれる。


「なるみさんは優しいのね…」

「優しいなんて、以前の君には言われた事なかったよ。凄く嫌な男だったしね…」

「ふ~ん…」


その時、後ろから懐かしい声がした。


「綾香!!」


振り返ると、知らない男が立っていた。


「……誰?」

「綾香…?俺っ」

「ごめんなさい。貴方の事、分からないの…」


呆然と立ち尽くす男に会釈をすると、私は病室に向かった。


「なるみさんは、あの人知ってる?」

「……知らないよ」

「そっかぁ…」

「こっちで知り合った人に、どんな人間がいるか分からないし、一人で病室から離れない方がいいんじゃないかな…?」

「そうだね。ありがとう」


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