小さな恋のメロディ
「こんにちは」

「こんにちはてん」

「大分寒くなりましたね」

「はい」

「ここには、よく来るんですか?」

「最近…」


男は私と同じくらいの年だと思う。
何処かで見た顔と声…。
でも私は思い出せなかった。


「俺は今日帰って来たんです。この町に…」

「何処かにでていたんですか?」

「…はい」


男は寂しそうな顔をしていた。


「じゃあ、そろそろ帰るんで…」


私が帰ろうとした瞬間、男は言った。


「又っ…。又会ったら、話しかけてもいいですか?」

「…はい」


私は笑顔でそう答えると、家に帰った。


変な人…。


「ただいま」

「又、散歩?」

「うん」

「今日、鳴海さんから電話があって、ご飯でも行きましょうって。18時に迎えに来てくれるわ」

「分かった」


私は部屋に戻って、服を着替える。

鏡の中の私は、私を知ってる?

思い出したくなかった過去は、時間を追えば追うほど、知りたくなる…。


身体の記憶と、頭の中の記憶のズレを、気持ち悪く感じた。


ソッと引き出しを開けて、”哲平”からの手紙を見る。
戻そうとした時、奥にある小さな箱に気付いた。

中を見ると、右手の薬指にピッタリ嵌る、ダイヤモンドの指輪が入っていた。

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