小さな恋のメロディ
この指輪は、どうしたんだろう?


誰に貰った?


パパ?
鳴海さん?
それとも…”哲平”?


その時ドアをノックする音が聞こえた。


「綾香、鳴海さんが来られたわよ」

「うん」


誰から貰ったかも分からない指輪を、付ける事は出来ない。
私は指輪を元に戻して、部屋を出た。




鳴海さんと入る、お洒落なレストラン。
店内はクラシックが流れている…。


「体調はどう?」

「大分良くなったみたい…です」

「敬語はいいよ。前の君は敬語は使わなかった」


前の私…?


「前の私はどんな感じでした?」

「…素敵だったよ」

「……」

「あの頃、僕は全然女に不自由してなくてね。でも君は僕に興味が無くて…気付いたら僕の方がはまってた」

「…鳴海さんは素敵だと思う。優しいし…」

「…僕を変えてくれたのは、君だよ?結婚の事、家とか関係なく本気で考えて欲しい」

「…はい」

「でも、そんなに待てないよ。君には散々待たされてるんだから」


そう言って鳴海さんは優しく笑った。

この人は私の過去を知ってる。
他の男の赤ちゃんを授かっていた私を、受け入れてくれてる…。


どんな事があっても、包んでくれる気がした。

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