小さな恋のメロディ
そして次の日学校に行くと、大野哲平が私の席の前に来た。
「ちょっと来て」
私の腕を強引に引っ張って、非常階段に連れて行く。
「……なに?!」
「お前だろ?猫の世話してんの」
みぃちゃんのこと……?
私は知らない振りをして大野哲平に答える。
「……なんのこと?」
「空地にいる猫。昨日空地に行けなかったら、友達に猫の餌やり頼んだんだ」
やっぱり……。
「……知らない」
「友達が清林の感じ悪い女が餌やってたって言ってた。お前しかいないだろ?」
「なんで感じ悪い女だと私なのよ?」
「髪が長くてすげぇ、綺麗な女だったって言ってた」
「……」
「お前いいとこあるんだな!」
大野哲平はすごく嬉しそうに笑っていた。
「話し終わったなら、行くけど?」
「い~じゃん!このままサボろうぜ?」
そう言って大野哲平は、私の腕を掴んで走って学校を抜けだす。
生まれて初めての脱走は、すごく悪いことしてるみたいで、ドキドキした。
ふたりがたどり着いたのは、学校から少し離れた小さな川原だった。
そこに横になった大野哲平は、少しかいた汗が、太陽の光でキラキラしていて、綺麗だ。
「お前も転がってみ?」
「汚れるからいい」
「いいから。気持ちいいぞ?」