小さな恋のメロディ
年が明けたある日、鳴海さんが言った。


「そろそろ返事を聞かせて貰ってもいいかな?」

「はい。…私で良かったら。お願いします」


入院中も毎日付き添ってくれて、私の過去も妊娠も、受け入れてくれた鳴海さんとの結婚を、断る理由なんてない。

ただそれだけだけど、私は結婚を承諾し、鳴海さんは凄く喜んでくれた。


「じゃあ、式の日取りとか決めていいかな?」

「うん」

「二人で色々決めて行こうな!」


私は幸せを感じていた。

けど、何故か心にポッカリと穴が空いたような気持ちになった…。


私は鳴海さんとの結婚が正式に決まってからも、小さな空き地に毎日のように散歩に行く。

いつものように空き地に行くと、久し振りに男の姿があった。


「久し振りですね。最近見かけなかったけど、元気でしたか?」

「……」

「何かありましたか?」

「……親父が…亡くなったんです…」

「…お父さんが?!」

「…俺は…何もしてやれなかった…」


そう言うと、男は泣いた…。

私は男を抱き締める。
自分でも何故だか分からない…。

でも、男が泣き止むまで、ずっとそうしてた…。


「もう大丈夫です。ありがとう」


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