小さな恋のメロディ
「では、後はお式を待つだけですね」

「はい。ありがとうございました」


結婚式の準備は着々と進み、式まで後一週間を切った。


「式が終わったら、婚姻届けを出して、すぐ新居で生活をしよう。それでいい?」

「…うん」

「…今なら、まだ引き返せるよ?」


鳴海は不安そうな顔をしている。


「…何で?」

「…君の気持ちが、ここに無いから…」

「そんな事っ…」

「君は記憶を無くしても、あの男に恋をしてる。俺は君がいつ記憶を取り戻すか、毎日ビクビクしている…。俺の気持ちが解る?」

「……」

「こんな気持ちになるなら、君が記憶を取り戻して、それでも俺と一緒に居たいと思ってくれるまで、待てば良かったよ…」

「……」

「……ごめん」



私はその夜、CDを聴く決心をした。

何かが変わるかもしれない。
変わらないかもしれない。


でも、
私の中のポカンと空いた穴が、埋まる気がした。

引き出しを開ける手は震え、震える手でCDを取ると、コンポに入れる。





曲が流れ始めた


そして


あの曲が流れた時


私の記憶が

まるでパズルのを作るように


埋まっていく……


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