小さな恋のメロディ
翌日、鳴海を呼び出した。


「どうしたの?急に」


普段、私から鳴海を誘う事はなく、鳴海は不安そうな顔をしている。


「ちょっと、話したいことがあって…」


私は以前、鳴海から貰った婚約指輪を、鳴海に見えるようにして、テーブルの上に手を置いた。


「その指輪…」

「……」

「記憶が戻ったんだね」

「…うん」

「じゃあ、結婚は白紙か」


私は鳴海を見つめ、首を横に振った。


「2つ…条件がある…。呑んでくれますか?」

「聞いてみないと分からないよ」

「じゃあ、結婚は白紙でお願いします」

「…分かったよ。何?」

「大野哲平に、工場が安定出来るくらいの寄付をお願いします」

「…やっぱり君はまだ…」

「違うわ。これは口止め料よ?東条家の息子の妻が、以前駆け落ちして妊娠したって噂が流れたら、困るのは貴方だけじゃない…」

「…それも一理あるな。分かったよ。もう一つは?」

「白い猫を一匹、私に買って下さい」

「…?分かったよ」

「猫は結婚してから…。大野哲平への寄付は、早急にお願いします」

「あぁ」

「こんな女を妻にする事、後悔してる?」

「…してない。僕は君を愛してるからね」

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