小さな恋のメロディ
ー結婚式当日


コンコン


「はい」

「入っていい?」


ママの声がした。


「いいよ」


複雑そうな顔をして、ママが部屋に入る。


「記憶…戻ったんでしょ?」

「……何で?」

「貴女を見ていたら分かるわ」

「……大丈夫よ。もうバカなことはしないから」

「綾香…」

「この家を出て分かったの…。私は当たり前な事も何も出来なかった。…こうなるのが分かってて、パパは連れ戻さなかったんでしょ…?」

「お父さんは…。貴女が家を出て、毎日イライラしてたわ。昔の自分と鳴海さんを被らせてたのね…」

「パパが…?」

「お母さんも貴女と同じ年の頃、同じ事をしたのよ」

「ママも…?」

「だから、応援してあげたかった。でも……ごめんなさいね…。結婚…やめてもいいのよ?お母さんが何とかするから」


ママはそう言ってくれるけど…。


「いいの。もう……。時々、この家に遊びに来てもいいかな?」

「当たり前でしょ?」

「ありがとう…。じゃあ、明日も早いから」

「そうね。おやすみなさい」

「おやすみ」


最後に過ごすこの部屋の夜は


寂しさでいっぱいだ

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