小さな恋のメロディ

「飼い主……?」


「コイツもずっとここじゃ、可哀想だろ?」


「そう……だね」



飼い主、見付からなきゃいいのに……。



「じゃ、そろそろ行くね」


「もう行くの?」


「家庭教師が来るから」


「そっか、又な!」


「又ね」



哲平とは学校では話さないから、この空地がふたりだけの秘密の場所みたいになっていた。


でも、みぃちゃんの飼い主が見付かったら、この秘密の場所も、ただの空地になってしまう……。


私がみぃちゃんを飼ったら、哲平はうちに来てくれる?


でも、うちでは飼えない……。



「ただいま」


「お帰り。お勉強終わったら、お父さんから話しがあるそうよ」


「分かった」



部屋に入り着替えると、家庭教師が来る。

家庭教師が帰ると、私はパパがいる居間に行った。



「座りなさい」



今日もパパは機嫌がいい。



「東城さんから連絡があってな。息子さんの鳴海君が、お前に一度会ってみたいそうだ」


「……うん」


「年内にでもどうかと言われたから、お前もそのつもりでいなさい」


「分かった……」



東城のことなんて、すっかり忘れてた。

結婚が決まっている私が恋愛をしていい訳がない。


哲平に彼女がいてよかった……。


< 16 / 141 >

この作品をシェア

pagetop