小さな恋のメロディ
夏休みが近付くころ、期末テストの結果が返ってくる。
哲平が私の答案用紙を取って言った。
「……九十八点。お前頭もいいんだな」
「家庭教師がいるから」
「そうだったな」
普段学校では話さない私と哲平。
こんなやり取りが、少し嬉しかったりした。
でも、普段話さないふたりだから、この会話に疑問を持った女がいた……。
それは、哲平の彼女で……。
そんな彼女の視線に、私も哲平も気付かなかった。
夏休みまで後二日。
私はいつものように帰り道、空地に寄る。
そこにはもう、哲平の姿があった。
「よっ!」
「今日は早いね」
「夏休みに入るとあまり会えなくなるからな……」
「……バイトって大変?」
「まぁな……。あっ、みぃちゃんのついでに俺にも弁当届けてよ」
こんな哲平の言葉に、何故だかドキドキする。
「料理したことない」
「そっかぁ」
これが恋なのかもしれない。
私には婚約者がいて、哲平には彼女がいる。
それでも、今ふたりだけの時間が嬉しい。