小さな恋のメロディ
そのとき、空地の入り口の方から、怒鳴るような声が聞こえた。
「なにやってんの?!」
そこには哲平の彼女が立っていて、痛いくらいの強い目で私を見る。
「陽子……。なんでここに?」
「学校ではあまり話さないみたいだけど、哲平と進藤さん仲いいから、気になって哲平の後を着けて隠れてたの。いつも隠れてふたりで会ってたの?!」
「……猫の世話してたんだ」
「私、猫の話しなんて聞いてないよ?」
「ごめん。飼い主が見付かる迄、世話をしようと思ってた」
「だったら、私が飼うから、もう二度とふたりで隠れて会ったりしないで!!」
なんか胸が痛い。
揉めてるふたりに私は言う。
「じゃ、私帰るから……」
そう一言だけ残して、私は空地を後にした。
「ただいま」
「お帰りなさい」
私は家に帰るといつものように部屋に入って、服に着替える。
「綾香、ちょっといい?」
「……いいけど」
ママはそう言うと部屋に入ってきて、一枚の写真を渡してきた。
「……?」
「東城鳴海さん。貴女の写真も渡しといたから」
ママはそう言って部屋を出ていった。
タヌキ顔の禿げたおじさんの息子は、思ったよりタヌキに似てなくて、爽やかな好青年って感じだった……。
こうしている間にも、私の時間は結婚に向かって進んでいるんだ……。
そう思うと、涙がでた……。