小さな恋のメロディ
電車に乗ったふたりはなんだか無口だ……。
「……お前、いつもと違うから、なんか緊張する」
「えっ?」
なんだ、そうだったのか。
私はクスクス笑う。
「笑うなよ」
哲平はそう言って少しすると、いつもの哲平に戻っていた。
そして花火がよく見えるところに近付くと、人が沢山いて哲平とはぐれそうになる。
哲平はなにも言わないで、私の手を取った。
花火がよく見える、少し空いてる場所を見付けると、哲平はいきなりタンクトップの上に羽織っていたシャツを脱いで、下に置いた。
私が意味が分からなくて、下に置かれたシャツを拾おうとしたとき、哲平が言った。
「そこに座れよ。せっかくの浴衣が汚れるだろ?」
「えっ、いいよ」
「いいから!」
私は無理矢理そこに座らされる。
哲平と見る花火はすごく綺麗で……。
このまま終わらなきゃいいのに……。
本気でそう思ってしまう。
花火が終わりに近付くと、哲平が言った。
「来年も来ような」
「……」
……ごめんね。
来年の約束なんて私にはできない……。
黙る私に哲平は優しくキスをした。
きっと、普通のカップルだったらすごく幸せだろう。
花火も、キスも、
こんなに切なくて、
悲しい物だとは思わなかったよ……。