小さな恋のメロディ

みんなが帰ったあと、なんとなく私と哲平は教室に残っていた。



「どうした?元気ないじゃん」


「ううん、なにもないよ」



私は無理して笑ってみせた。



「お前はお前らしく、いつも通りでいいじゃん?」


「そうだね……」


「聴く?」



哲平はCDウォークマンを見せて、片方のイヤホンを哲平の耳に、もう片方のイヤホンを私に渡し、私はそれを耳に入れた。


CDの曲はよく分からなかったけど、なんとなく心地よくて、時間が経つのも忘れ、気が付いたら家庭教師が来る時間を回っていたけど、私は気付かない振りをして、哲平と一緒にいた。



「ただいま」


「何時だと思ってるの?!さっきまで小野田先生いらしたのよ?」



すごい剣幕でママが言った。



「別にいいでしょ?たまにはサボりたいときだってあるんだよ!」


「貴女最近変よ?聞いてるの?」



私は怒るママを無視して、部屋に入る。


今までなんでも言うことを聞いてきたのよ?

これくらいなにが悪いの?


初めてママを本気でウザイと思った。


ママだって、隠れてほかの男と会ってるじゃない!


パパだって、汚いことしてるんでしょ?





それなのに……。


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