小さな恋のメロディ

次の日、一時間目が終わると哲平が言った。



「今日、家庭教師来るの?」


「今日は休み」


「じゃあ、サボろうぜ!」



ふたりで学校を抜け出して、川原に向かった。


学校を抜け出すのは、やっぱりドキドキする。


川原に着くと、又ふたりで寝転がった。



「おいで」



哲平が私に腕枕をしてくれる。


私は息が止まりそうなるくらい、ドキドキした。



「お前さ、たまには息抜きしろよ?」


「えっ?」


「よく分かんねぇけど、あんま、溜め込むなよ?」



そう言って哲平は優しく笑う。



哲平はなにか気付いてるのかも知れない。


もし、今、婚約者のことを話したら、哲平はなんて言う?


私から離れていく?


それとも、今日ここに来たみたいに、


『逃げようぜ』


そう言って、どこかに連れて行ってくれる?


私は大きく深呼吸をして哲平に言う。



「あのね、哲平……」


「……」



哲平は気持ちよさそうに眠っていた。


これは、


“言うな”


ってことなのかもしれない。


私はこのとき、言わないことを心に決めた。


別れるときがきても、

後悔しないように……。


哲平と、

今を精一杯楽しもうと思った。


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