小さな恋のメロディ

そう言って私は部屋に戻った。


制服を脱いだ私を鏡で見る。

制服から解放されても、私は自由じゃない。


この進藤の家に縛られてるから……。


服に着替えると、ママが部屋のドアをノックして言った。



「小野田先生がこられたわよ」



小野田は家庭教師だ。

二時間の勉強が終わると食事の時間で、今日は珍しくパパがいる。


静かな食卓の中、パパに言った。



「私、ヴィトンの新作の鞄が欲しいんだけど」


「そうか。じゃあ、明日にでも買ってこよう」


「本当?パパ大好き!」


「欲しい物があったら、なんでも言いなさい」



この男はバカだと思う。

娘になんでも買い与える。


ヴィトンの新作の鞄なんか、欲しい訳ないじゃない。

クラスのバカ女が欲しがってたから、当て付けに買ってもらうだけ。


ただ、それだけ。


欲しい物なんてない……。


バカ女が嫉妬する顔を思い浮かべると、少し笑えた。



「どうした?」


「なんでもない。じゃあ、お風呂入って寝るから」


「あぁ」



そう言ってお風呂に入り、部屋に戻った。


知らない番号から、携帯が鳴る。



「……はい」


「田上だけど」


「あー……」



そっか、番号教えたんだった。


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