小さな恋のメロディ
「ううん、すごく楽しかった」
「そっか」
哲平は嬉しそうに言って手を繋ぐ。
「今度は俺が綾香んち行っていい?」
「……うちは、つまんないからいいよ……」
「なんで?」
「……」
哲平を連れては行けない。
パパやママ、きっと哲平に酷いこと言うよ?
私はなにも言えなくて……。
さっきまですごく楽しかったのに、ふたりの間に沈黙が襲う……。
家までの距離がすごく長く感じた。
家に着くと、
「じゃあな」
哲平は一言だけ言って帰っていった。
違うのに……!
哲平はきっと、誤解している……。
なのになにも言えない自分が辛かった。
でも、なにが違うの?
婚約者がいることで、哲平を裏切ってることには変わりない。
哲平を傷つける日が近づいてることを、私は痛いほど感じてた。
それは確実に近づいていて、
逃げることは、
できない……。