小さな恋のメロディ

その日から、哲平とは学校で話すこともなく、毎日あった電話もなくなった。


私は里沙と行動する事が多くなり、哲平は友達と一緒だったり、時々陽子と一緒にいたりする。


こんな風になると、同じクラスは辛くて……。


平常心を保つだけで、精一杯だった。


そんなときは、帰り道に哲平とみぃちゃんの世話をしていた、あの空地に行って、楽しいことだけを考える。


家に帰って哲平を思い出すと、勉強をして、哲平のことを考えないようにした。


せめてクラスが違ったら、少しずつ忘れられたかもしれないのに……。


嫌でも顔を合わせてしまう。


そして今日は東城の息子、鳴海とのデートの日だ。


鳴海は休み日に会おうと言うことはなく、平日、学校が終わって家庭教師が休みの日に会う。


いつも迎えに来る、親に買ってもらったという真っ赤なポルシェは、女のピアスが落ちていたり、金髪の長い髪が落ちていたり、女たちの匂いでいっぱいだった。



「今日は何処行く?」


「何処でも……」


「じゃあ、夜景でも見に行く?」


「…うん」



そう言って鳴海は車を走らせる。

鳴海が選ぶ行き先は、女がいかにも好きそうな場所ばかりで、沢山女がいるんだろうと感じていた。



< 44 / 141 >

この作品をシェア

pagetop