小さな恋のメロディ
「……ありがとう。部屋に戻るから」
「あぁ」
私は部屋に戻ると、パパが買ってくれた鞄を、投げるように床の上に置いてベッドに転がった。
天井を見てボーッとする。
横を見ると鞄が転がっていて、棚には色んなブランド物の鞄が収まりきらないくらいあふれてる。
いつ買ってもらったかなんて忘れた……。
「綾香、ご飯よ」
「分かった」
家族皆が揃う食卓はやっぱり静かだ。
そんな中、上機嫌のパパが言った。
「綾香の結婚がまとまれば、我が家は安泰だな」
「そうね」
「東城さんの息子さんは、男前だそうだぞ?」
「……そう。ご馳走様」
「綾香、もういいの?」
「うん」
そう言って又部屋に戻る。
東城っていうんだ?
私の旦那になる人は……。
タヌキの息子が男前な訳ないじゃない。
相手がカバだろうが、豚だろうが、私は結婚する。
男前だろうが、不細工だろうが、そんなこと、どうでもいいよ……。
明日は、パパに買ってもらった鞄で学校に行こう。
あのバカ女はどんな顔をするだろうか?
私は又、そのまま眠ってしまった。