小さな恋のメロディ
あれから紺野君が里沙の家に転がり込み、始めは四人で遊んだりしていたけど、少しずつ連絡の回数は減っていった。

寂しい気持ちの私と、少しホッとしている私がいる。

私は家事は少しだけ慣れた。
哲平が寝る時間は、哲平がよく眠れるようにと、街に出掛けてブラブラ歩く。


「すみません、ちょっといいですか?」

「はい…?」

「私キャバクラのスカウトをしてる者ですが、お話だけでも…」

「…はい」


普段、哲平や里沙達以外と接触する事がなく少し退屈だった私は、軽い気持ちで話を聞いてしまった。


哲平との距離が出来る事を考えもせず……。


「暑いし、喫茶店にでも入りましょう」


男はそう言って、目の前の喫茶店に入る。
私も男の後を着いて行く。

席に着くと、ウエイトレスが来て水を置いた。


「ご注文が決まりましたら…」

「じゃあ、ミックスジュース…」

「私はコーヒーで」


ウエイトレスが注文を取り、居なくなると男が言った。


「早速ですが私は”クラブミュウ”というお店の店長をしている、田中といいます」


田中は名刺を渡し、私はそれを受け取る。


「キャバクラの経験は?」

「…無いです」

「では、軽く説明しますね」

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