小さな恋のメロディ
この小さなアパートを借りて、4ケ月が経った。

お金の管理は哲平がしている。

哲平がいくら給料を持って帰って、どう遣り繰りしているかを私は知らない…。


「来週花火に行かない?」

「花火?」

「去年一緒に行った花火。俺んちに一泊して」

「うん、行きたい!」

「じゃあ、決まりな。俺仕事行って来るわ」

「行ってらっしゃい」


ポツンと一人残される夜はやっぱり慣れない。

一人で見るテレビは、ただのBGMになって、私はそれを眺める…。


ー花火当日

私達は4ケ月振りにあの町に帰る。
でも、兵庫を離れる訳じゃない。

電車に揺られ、花火が上がる場所に行くと、ちょうどいい時間で、私達は去年と同じ場所に座った。


花火が始まると哲平が言う。


「俺さ、去年花火見ながら”来年も一緒に見れますように”って願掛けてた」

「今年も見れたね」

「あぁ。来年も再来年も、二人で見に来ような!」

「うん」


去年言えなかった言葉が、今年は言える。

あの家を出て不安だった。

でも、二人で生きてる。



ねぇ、哲平。
これからもずっと、二人で生きて行こうね……。

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