言えない恋心

 その女性は自分だとは当然言える筈もなく、わたしは素知らぬフリをして尋ねた。


「おや、私(わたくし)のヒース。こんなところにいたのね?」


「お祖母様」


 おばあさま?

 ヒースにつられて声がする方を振り返れば、そこにはダークグレーのドレスを身にまとった、ほっそりとしたお婆さんがいた。

 夜の星空のような綺麗な目に、後ろでまとめられている白髪は絹のようだ。

 とても上品な彼女は知っている。


 ああ、なんていうことかしら!


 昨日、わたしをパーティー会場まで連れて行ってくれた、あの女性がヒースのお祖母様だったなんて!!

 これでわたしはあのドレスを返す機会を失った。わたしは一生泥棒扱いをされるのね。

 いいえ、それどころじゃないわ。ヒースに昨夜の女性がわたしだと知られてしまう!!




「あら? 貴女は……」

「お祖母様、ロズをご存知なのですか?」


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