言えない恋心

 小説はどれもすごく素敵。それはまあ、物語の主人公はわたしと同じで貧しい民家の育ちだけど、いつも皆に愛されていて、そしてハンサムな王子様と恋に落ちるのよ。

 小説を読んでいると、わたしも物語の主人公になった気分でいられる。



 ――だけど、現実は違う。

 王子様はやっぱり王子様だし、地位がある方。

 間違っても、身分が低い上に灰をかぶったような醜い容姿。加えて吃音症で、とにかく気分が滅入ってしまう相手とは恋に落ちないでしょうね。




「さあ、頑張りましょう」


 わたしは気を取り直し、灰色をしたツギハギだらけの袖をまくる。

 骨ばかりが目立つ白い腕なんか気にしていられない。

 とにかく今は、この素敵な庭の雑草を抜き、好きな読書に専念したいわ。


 今という、悲しい現実を忘れるために。


「やあ、ロズ」


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