君に熱視線゚
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「ああ!その節はどうもお世話になりましたっ」

苗はその場でペコッと頭を下げた。

「料理はあれで足りた?」

「はい!腹八分目でちょうどよかったです」

ホクホクした笑みを返しながら晴樹に答える。

そして晴樹は何か言いたそうな表情を見せて、急に口端を緩めていた。

「……ふっ…」

「……?…」

いきなり吹いた晴樹に苗は首を傾げる。
晴樹はニヤケる顔を無理矢理真顔に整え口を開く。

「ところでさ……満作さん…元気?」

「へっ!?」

苗の目がクリクリに見開いた。

(……っ…なんでウチのオトンの名を!?…父ちゃんまた何かしでかしたんじゃ!?)

苗はビクビクしながら訊ねる。

「あの……元気、ですが……ウチの満作に何かご用でしょうか?」

「ぶ……いや、元気ならいいんだ……」

「……?…」

(……なんだか気になる言い方するな、この人…)

そんな苗の困惑顔をよそに、笑顔のままの晴樹を見て周りの女子はボソボソと呟く。

「ねぇ、まさか苗の知り合い!?」

「そうかも、だってわざわざこっちの教室まで来るんだから‥」

「でも、さっきの取り巻きのお嬢軍団はどうしたんだろ!?」

回りの女子はあれこれと想像を巡らせる。

お嬢軍団は苗の所に来る為に、晴樹が自分で追い払っていた……。

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