君に熱視線゚

“料理を持って帰れない”


この言葉にショックを受けている苗を落ち着かせるように晴樹は続けた。

「そのかわり、別の持ち帰りを用意してるからそれで勘弁してくれ」


「え、そうなの?ほんとに!?」


「ああ、だから、座ってくれないか?」


突然、勢いよく立ち上がった苗は周りの視線を一身に受けている。


晴樹の言葉に安心した苗は言われるまま椅子にぽすんと腰掛けると、ショックで強張った表情を再びにぱぁとほころばせた。

「なんだ……そっかぁ!!
よかったぁ‥へへ。いやぁ、実は弟達が持ち帰り楽しみにしてたからさっ!!」


苗は、良かった良かったと連発してニコッと晴樹に笑いかけた。

その表情に晴樹は動きを止めていた。

「──……っ…」


食後のコーヒーを飲んでいた晴樹は味わうのも忘れ、口に含んだそれをゴクリと咽喉に流し込む。

晴樹は嬉しそうにジュースのストローを口にした苗から目が離せなかった。


そして再び中島に指摘される


「晴樹さん」

「え……何?…っ」

「顔が……赤いです‥」

「──…っ…赤い?マジで?……熱っぽいのかな?」

(……言われてみれば何だか顔が熱いような気が──)

そう感じながらも晴樹は自分の心の変化に気がつくことはなかった‥

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