君に熱視線゚

窓から顔を出すと見覚えのある後ろ姿が勢い良く渡り廊下を突き抜けて3年の校舎へ向かって行く──


「あれって田中さん?」

一緒に窓を覗いた直哉が言った。


「見たいだな……ちょっと行ってくる」

苗の後を晴樹は追った。


「ぐぇぇっうぅっグスッ…お姉さ~んっ!!うぅっ…」


苗はちょうど晴樹達が居る2年の校舎に向かおうとしていたお嬢軍団を見つけ、学食で握手を交わしたお嬢の胸にしがみついた。


「あら……たしか、1年の晴樹の“妹”ちゃんだったよね?どうしたの」


「グスッ…うぅぇっぇ……ぜ、ぜいふく……グスッぅぅ」


苗は嗚咽混じりにくちゃくちゃな顔で訴えた。


「ぜいふく?‥
(どうでもいいけど凄い顔‥あまりくっつかないでっ)」


「苗っ──!」


お嬢が苗の言葉の理解に苦しんでいると晴樹が走り込んで来た。そしてその後から直哉もやってくる。


「晴樹!!
今から、そっちに行くとこだったの!」


お嬢が晴樹を見るなり黄色い声で喋りだす。だが晴樹は構わずに苗に話しかけた。

「どうした?苗、3年の校舎に何の用だよ?」

優しく語りかける晴樹に苗はしがみついていたお嬢の胸から顔を上げた…


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