君に熱視線゚

「うぅっ……グスッ…兄たんっ…せいふくがぁ…」

(…兄たん?……どうでもいいけど凄い顔だな…っ…)

「直哉‥お前、テイッシュ持ってるか?」


直哉は返事の変わりに肩を竦め、そして何かを思い出して立ち去る。戻って来た直哉が手にしていた物は──…トイレットペーパーだった。


「サンキュ……テイッシュよりこっちの方が拭きやすい」


晴樹はロールペーパーを手に取ると、洪水のように滴る苗の鼻水をぶしゅぶしゅっと拭いてくれた。

そしてもう一度問いかける晴樹に苗はシクシク泣きながら語り始めた…


「……なるほどね…ウチの夏服が欲しいと……んで、3年のこいつらが余分に持ってるんじゃないかって?」


晴樹は苗の言い分を聞いてお嬢に目配せした。


「あたし達も今年限りで着ないし余分にあるからあげても構わないけど……サイズがちょっと……」

「たしかに……」


納得する晴樹をよそに苗は再び“うぅっ”と涙を溜める。

そう。苗は自分では“ぽっちゃり”だと自覚しているが、周りから見ると…

ぽっちゃり×2.5……だった。

晴樹はくずる苗を眺め溜め息を吐く。

「……よしわかった!苗、お前、後でサイズを紙に書いてこい。ここの卒業生当たってみるから……な!だからもう泣くなよ」


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