君に熱視線゚
5*田中家
帰りは家まで晴樹が送ってくれた。
「そうだ、兄さん!
ウチで晩御飯食べてって!!
何もお礼できないからご飯くらいしかお返しできないけど‥‥
でも、みんな帰って来てるからうるさいかもしれないっ…」
晴樹はそんな苗の誘いを二つ返事で受けていた。
“みんな帰って来てる”
この言葉に晴樹は誘惑されてしまったのだ。
(…満作父さんに会えるっ)
晴樹は心なしかワクワクしていた。
途中、苗の寄り道で晴樹は何度もスーパーに車を止めさせられる。苗の家につく頃にはとっぷりと日も暮れ夜になっていた……。
ガタッガタガタッ!ガラッー
異常に建て付けの悪い玄関の引き戸を開けると、苗はただいま!と声を掛けて中に入る。
晴樹は車から大量の荷物を下ろしながら苗の家を眺めた‥
(ここに10人で住んでんのか‥‥ある意味凄いな──)
木造二階建て5LDK
築32年。
ちなみに周りにどんどん建てられているのは結城グループのマンションだった。
この辺の土地は最近急激に高騰しはじめ、一ヶ所を除き周りの土地はすべて買収できたと聞いている。
(その一ヶ所って苗の家だったのか‥)
晴樹は今一度その古民家を眺めた。
ただ、ここも借家。大家は売る気満々だったが住民の立ち退きに手間取っているとの話だった。
そう。長い間住んでいると例え借家でも居住権が発生してしまう‥
苗は追い出されてはイカン!! と思い、立ち退きのネタになる家賃滞納金を纏めて一括で払い込んでいた。
そのために当分は今まで以上に苦しい生活を余儀なくされる…
従って苗にとって、たまにお持ち帰りをくれる晴樹の存在は、拝んでも拝みきれないありがた~い人になっていた‥
「苗、全部ここに置けばいい……っ!?」
買い物した荷物を晴樹が玄関に運び込んでいると目の前には同じ顔が三つ、並んでいる。
そして、晴樹を見るなり奥の部屋に向けて叫んだ!
「姉ちゃんが男連れて帰ってきたぞ──!」