DESTINY 運命
chapter1 見えない傷
雨は嫌いだ。
あの日も、雨が降っていた…。
午後3時。秋の足音がする10月のこと…
夜勤明けの眠い授業を何とかこなし、バス停のベンチに座る。今日もこれからまたバイトだ。
朝はそんなに曇っていなかったのに、昼頃から急な雨が降り、授業が終わる頃には次第に勢いの強い雨がアスファルトを叩くまでになっていた。
私はその様子をぼんやりと眺め、小さく舌打ちした。
雨は私に嫌な記憶をもたらす。
何年たっても、あの時の虚しさや怒りを忘れる事はできないーつまり、負の感情はいつもこの心にある。
そんな事を思い返していると、ようやくバス停にスクールバスが帰ってきた。
私が通う大学は市の山間部にある為、バスを使わないと市街地まで出られない。
私鉄の駅まで乗り入れているのが唯一の救いでもある。
席はちょうど窓際だった。雨がガラスに跳ねて小さな音をたてるのが分かる。
私はホッと息をつき、静かに目を閉じた…。