好きも嫌いも冷静に
いい大人の男が

・恋愛“マスター"


「おい、聞いたぞ?武勇伝。まさにお前が“英雄”だな」

「そんな、語るようなもんじゃないよ…たまたまだ」

何だか脱力感を感じながら、休みなのにわざわざ外出して、英雄の店に来ていた。
しかも夜になってから、重い腰をあげてだ…。

「どうしたどうした?いつになく、しんどそうじゃないか」

「ん、別に…」

「何だか歯切れも悪いな〜。体調でも悪いのか?どれどれ」

英雄がおでこに手を当てた。
やめろって、いつもなら言うところだが、…そんな気力も湧かなかった。だからだろう。

「重症だな…」

「え、何が、熱はないはずだ」

「重症だよ重症…。これは問診しないとな…」


「おい、急に…」

英雄は俺の手を引き、例の如く、スタッフルームへとズカズカ引っ張り込んだ。


「さて、伊織、どうしたんだ?何かあったのか?」

「…何もない」

「はぁあ?何もないって…何かあったから変なんじゃないのか?それとも、俺には話せない事か?」

「いいや、…何もないから…おかしいんだ」

「はぁ?それは一般的におかしな話だぞ。何もなければ変にはならない」

「…おかしくなりそうなんだよ…お預けを喰らったっていうか…、予定が狂ったっていうか…」

「はぁ?なによ。何がどうしちゃったのよ」

「英雄、お前が折角アシストしてくれたのに…あの日…、空き巣を捕まえた夜…」
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