好きも嫌いも冷静に
休みの日にこんなところで見掛けるなんて…神様、有難うございます…。
だけど…女の人と一緒だ。…しかも美人さんだ…、あ、手、いいな〜。ポケットの中できっと繋いでいる。
段々、正面に近づいてきた。
どうしよう…。顔はこのまま見ていたいけど…どうしよう…バレちゃう?かな…。でも、折角だから…。
俯くのを止めて、笑顔を作って声を掛けるつもりでいた。
「あ、確か、ともみちゃんだよね?」
あろうことか、あの人から声を掛けてくれた。
しかも、え?なんで?どうして私の名前?
「は、はい。こ、こんにちは。…あの、どうして名前…というか、あの時は失礼しました。何度も助けて頂いて…」
「大した事はしていません。あ、名前?名前はね、最初に間違えられて後ろから抱きしめられた時、一緒にいた女性が呼んでたでしょ?
だから知ってる。間違ってないよね?」
「あ、は、はい。ともみです、間違いありません」
クスクス。
「そんなに恐縮してたら、また、慌てて車道に出ちゃうよ?」
「え、あ、は、はい。気をつけます。あの…」
「ん?」
「あ、何でもないです。お礼、きちんと言えてなかったと思って。毎回バタバタしちゃってて…恥ずかしいところばかりで。有難うございました。あの…差し出がましい事を窺います…デート…ですよね?」
「ん?あー、そうだなぁ。そうなの?」
問い掛けられた彼女さんが笑っていた。
「どうでしょうか…」
「まあ、本屋さんに一緒に行っているところなんだ」