好きも嫌いも冷静に
・すっきりしない
「英雄、ケーキを持ち帰りしてもいいかな?」
「ああ、今、入れるよ」
「今日は有難う。それから、あまり誤解を招くような発言や行動は…、頼むから勘弁してくれ。俺にはいいけど、まだ澪さん慣れてないから」
「ああ、伊織と居るとつい、いつもの癖が出て…、気をつけるよ。
あと、環の事も…、すまん、つい、な。悪かったよ」
「大丈夫だ。ただ、俺がちょっと焦っただけだ。…いずれは会う時も来るだろう?
店で偶然会う事もあるかも知れない。それまでに、澪さんにきちんと経緯を話しておきたいから。今晩にでも話すよ」
佐蔵さんもわりと爆弾を落としたいタイプの人だからな。悪気のない、からかい半分で話を盛られないとも限らない。
「そうか、まあ、何もないし。心配する事、ないじゃないか」
「…だといいけど、…何もないなんて、おかしいとか、…変に誤解して深読みとかされると困るけど」
「そんなのは杞憂に終わるさ」
澪さんはすみれちゃんに質問責めにあっているようだった。
俺らとは離れた場所にいた。じゃないと、こんな込み入った話は出来てない。
澪さんが質問に困らないうちに切り上げないと、…こっちにも危害が加わりそうだ。
何だか深刻な話なのか?
澪さんがうんうんと頷きながら、すみれちゃんの肩に腕を回し、撫でていた。
ここは空気を読まない方がいい。
俺はいきなり澪さんを呼んだ。
「澪さん、帰りましょう」
と。